広東語の語法

語順

基本文型
基本の語順はSVO型です。例を見てみましょう。

我 食 蛋糕。 : 私はケーキを食べる。 (主語+動詞+目的語)
例外として、目的語を主題として、先に提示する事がよく行われます。

蛋糕, 我 食! : ケーキは私が食べる! (主題化された目的語+主語+動詞)
また、補足的に文法成分を後に付け足す言い方が、他の方言よりも多く見られます。

佢 食緊 蛋糕,我 諗。 : 彼はケーキを食べている、私が思うに。 (目的語となる句+主語+動詞)

修飾語の位置

修飾語は被修飾語よりも前に置きますが、個別の語彙においては修飾成分が後置される場合もあります。

青 沙律 : グリーンサラダ (修飾語+被修飾語)
青菜 : 青菜 (修飾成分+被修飾成分)
椰青 : 青い椰子の実 (被修飾成分+修飾成分)
比較表現 [編集]
北京語もしくは普通話とは違う語順となる。
広東語 : 北京語

我 高 過 佢  :  我 比 他 高 (私は彼より高い)
間接目的語の位置 [編集]
北京語もしくは普通話とは違う語順となる場合が多いです。(以下の例では「你」が間接目的語)
広東語 : 北京語

我 畀 錢 你  :  我 給 你 錢 (私はあなたにお金をあげる) 
我 對 你 唔 住  :  我 對 不 起 你 (私はあなたに顔向けできない)
繋辞 [編集]
繋辞として「係」(hai6)が用いられます。「係」は中国語の書面語に表れることがある古語です。

我 係 學生 : 私は学生です。
「係」は肯定の返事にも用いられ、日本語の「はい」の語源という説もあります。 書面語では中国語共通の「為」や「是」も用いられます。

副詞
通常動詞よりも前に置かれるが、ベトナム語にみられるような、動詞の後に置かれる副詞「先」や「添」などがある点が北京語などと異なります。

我 慢慢 食 飯 : 私はゆっくりご飯を食べる (主語+副詞+動詞+目的語)
我 食 飯 先 : 私が先にご飯を食べる (主語+動詞+目的語+副詞)
我 食 飯 添 : 私はご飯も食べる (主語+動詞+目的語+副詞)

補語
方向補語、可能補語、結果補語など、動詞の後に補充する成分がある点は北京語などと同じです。

行 出去 : 歩いて出て行く
食 唔落 : 呑み下せない、食欲がない

類別詞
中国語で「量詞」と呼ぶ類別詞が発達しているのは中国語共通であるが、北京語とは異なる類別詞を使うものがあります。

 広東語 : 北京語

張 jeung1 : 把 bǎ (脚:椅子を数える場合)
把 ba2 : 口 kǒu (声を数える場合)
單 daan1 : 件 jiàn、起 qǐ (件:事件、商売などを数える場合)
身 san1 : 頓 dùn (発:体を殴る回数を数える場合)
類別詞の前に数詞を伴わず、特定化のためだけに使うことが行われる。

佢 有 一 架 車 : 彼は車を一台持っている
架 車 係 佢 嘅 : あの車は彼のだ

語気助詞
中国語の中で最も豊富な文末語気助詞を持ち、100種以上が常用されています。 例を見てましょう:

呀 a3 : 断定、強調、説明、疑問、反復など多くの語気の表わし、最も多用される
㗎(口へんに架) ga3 : 疑問、説明を表す
咩 me1 : 意外さや驚きを込めた疑問を表す
啩 gwa3 : 推量を表す